疥癬について サノ皮膚科クリニック
(1) このダニ(ヒゼンダニ)は人から人へ伝染します。さわったぐらいでは通常伝染しません(ただし、ノルウェー疥癬と呼ばれる重症型の疥癬はさわっただけでもうつる事があります)が、同じ部屋で寝ると伝染するので、雑魚寝病といわれています。ヒトの体を離れると数日でほとんどが死にます。メスの成虫は手などに巣を作って卵を生むため余り動きませんが、幼虫やオスは、首から下の体中を動き回っているため、発疹のある所だけ薬を塗っても効果がありません。塗り薬は首から下全身に塗ってください。
(2) 衣類、寝具からも伝染することがありますので、洗濯や虫干しをまめにやってください。
(3) 家族や友人にかゆい人がいたらその人にもダニがいる可能性があります。すぐに皮膚科受診を勧めてください。
2.治療
(1) ストロメクトール(一般名イベルメクチン) 現在、最も有効な治療薬です。通常1週間おき計2回の内服で十分な効果があります。しかし、高齢の方などは2回の内服でも完治せず、3回以上の使用が必要なことがあります。副作用のチェックのため、内服の前後に採血により肝機能を調べます。
ただし、体重が15kg以上の人にしか使えません。内服後4〜8時間で、皮膚の表面(角層)の濃度が最高になるので、内服後8時間は入浴を控えてください。
(2) スミスリンローション5% 体重が15kg未満の場合、ストロメクトールは使えませんので第一選択として使用します。小児等への投与実験はされていないため安全性は確立していませんが、頭じらみ用の低濃度のものは子供にも使用されており、ペルメトリン(下記参照)類似の薬品で毒性が低いため、使用してよいと思われます。保険適応です。1週間隔で計2回頸部(耳の後ろも)以下足の裏まで全身に塗り、12時間以上経過した後に入浴シャワー等で洗い流します。その間手は洗わないか洗ったらまた塗ります。
(3) オイラックス 1日1回入浴後に首から下全身に塗り数週から1ヶ月続けます。手は洗うごとに塗ります。効果は十分とは言えませんので、補助的な治療になります。ストロメクトールを内服すれば、必ずしも必要はありません。
(4) ペルメトリンクリーム 現在、個人輸入でしか手に入りません。高い殺虫効果を持つばかりでなく、毒性が低いため、妊婦、授乳婦、生後2カ月以上の乳幼児にも使用できる外用剤です。欧米では、疥癬治療の第一選択薬ですが、ホルマリンが安定剤として含有されているため、日本では認可がおりません。従って、使用による結果は使用した人の自己責任となります。自費になります。
治療の注意
(1) ストロメクトール内服、スミスリンローション外用ともに、治療開始後2日あれば、ダニはほとんど死んでいると考えられます。だだし、卵には効きません。このダニの卵は3〜5日で孵化し、10〜14日後には成虫になり次の産卵が始まるため、ストロメクトールやスミスリンローションの2回目の内服、外用は次の産卵前に行う必要があります。
(2) 皮膚の角質は薬1ヶ月ではがれるので、1ヶ月後に角層内には、ダニの死骸もなくなるので、治療終了後1ヶ月でダニがいないことの確認が必要です。
参考文献 日本皮膚科学会疥癬診療ガイドライン(第3版追補)
2019年1月30日改変